受講概要
プログラム
1.導入
1-1. 水素ガスの歩み、FCVへの水素搭載方法検討の経緯
1-2. FC(Fuel Cell,水素燃料電池)の歩み
2.FCの普及状況
2-1. FCV (Fuel Cell Vehicle)の普及状況
2-2. FCV以外への展開
3.水素の爆発性とその対策(事故事例紹介など)
4.高圧水素ガスの法規・基準について
5.FCVでの材料課題(金属材料の法規制)
6.高圧水素ガス環境での金属の水素脆性
~低合金鋼、ステンレス鋼、アルミニウム合金について講師の実験結果を中心に説明~
6-1. 高圧水素ガスによる水素脆化事故事例
6-2. 高圧水素ガスによる水素脆化研究の歴史
6-3. 金属材料強度への高圧水素ガスの影響
6-3-1. 水素の影響調査方法
(1) 微速度引張試験(SSRT) 高圧水素ガス中と陰極水素チャージ法
(2) 水素分析方法
(3) 昇温脱離水素分析(TDS、拡散性水素の測定)
6-3-2.各種金属の微速度引張特性(SSRT)
6-3-3.遅れ破壊特性(低合金鋼SCM435の実験結果)
6-3-4.疲労特性(低合金鋼SCM435、ステンレス鋼SUS316Lデータ)
6-4. 金属の水素脆化の原因について(水素の固溶と拡散)
~鉄鋼材料中心とした金属と水素の関わりに関する基礎知識~
6-4-1.金属結晶と水素
・金属の結晶構造 ・各種金属の水素固溶度 ・鉄結晶格子中の位置
・実用鉄鋼材料での水素存在位置(粒界、介在物、転位など)
6-4-2.水素固溶プロセス(乾燥水素ガス、腐食環境)
6-4-3.水素ガスからの水素固溶量の計算(鉄系材料)
・ジーベルツの法則 ・実験式紹介(純鉄、鋼、ステンレス鋼) ・鋼の実測値との比較
6-4-4.腐食環境での水素固溶量と疲労強度(低合金鋼)
6-4-5. 塑性変形による水素固溶量増大について(低合金鋼SCM435)
6-4-6.水素の拡散係数(D)
・各種金属 ・鉄、鋼のDの実験式(文献)と計算結果
6-4-7. 鋼の水素透過量実測(厚さ6cmの水素高圧容器)と透過係数、拡散係数算出
6-4-8.応力集中部へ水素が拡散凝集し破壊を生じさせた実例紹介(SUS630圧力センサ)
6-4-9.水素による脆化メカニズム推定(鉄系材料)
7.高圧水素ガス環境でのその他の材料課題
7-1. 樹脂やゴムの水素吸収・透過および高圧水素ガス中曝露評価(シールゴムのブリスタ)
7-2. 他(希土類磁石、ひずみゲージ)
質疑・応答
受講形式
会場・WEB
オンラインでご参加の方は、事前にこちらでZoomの接続環境をご確認ください。
スムーズな受講のため、カメラ・マイク・スピーカーの動作をご確認ください。
受講対象
・エネルギー源、エネルギーキャリヤーとしての水素、およびその利用に関心のある方
・上記関連業務に関わっている方、およびこれから関わろうとしている方
・高圧水素ガス関連部品・設備・関連機器などの利用者、設計者、実験や研究をされる方、管理者、
責任者
・水素脆性に関心のある方 など
予備知識
基礎から分かり易く解説しますが、材料名や強度評価についての予備知識や経験があればより理解し易いと思います(簡単な説明はする予定です)。
習得知識
1)水素エネルギー利用状況
2)水素安全の具体的対策に直結する水素ガスによる事故事例の知識
3)水素設備安全性担保のための基本事項、漏れ検知方法、大量漏れの対応などの基礎知識
4)FCVの圧縮水素容器・付属品の金属材料規制に関する知識(高圧ガス保安法、道路運送車両法など)
5)高圧水素ガスによる鋼やステンレス鋼の水素脆化に関するデータ
6)水素脆化の原因となる水素の金属への固溶、拡散についての基礎知識
7)金属以外の材料への水素ガスの影響(樹脂、ゴム、など) など
講師の言葉
カーボンニュートラルやエネルギー安全保障の点から今後発展が期待されている水素について、取り扱いの基礎知識を解説します。私は自動車会社で初期の燃料電池自動車開発に関わり、高圧水素ガス環境下での材料強度を実験調査するという得難い機会に恵まれました。この経験と浅学ではありますがそこから得られた知識を基にお話しします。
工業的には既に多量に使われている水素ですが、危険なガスとされています。それは、他の爆発性を有するガスに比べ、漏洩し易く、加えて材料(金属、樹脂、ゴムなど)内部にも原子や分子として侵入し場合によっては材料を破壊し、大きな事故を引き起こすという特異な性質を持っているからです(水素脆性など)。本講座では、エネルギーとしての水素の利用状況にも触れながら、水素の特異性を中心に基礎的な知識について解説します。
また、この水素の特異性は使用材料の制限、設備や関連機材の特殊性、法規制などにも繋がっており、水素エネルギー実用化への障壁の1つにもなっています。根本原因となる水素の材料への侵入・透過・脆化(金属)の特性は未だに研究対象で難しい課題ではありますが、本セミナーでも少し詳しく取り上げ解説します。一方で、既に課題克服に向けての研究開発も行われています。本研修がその一助になれば幸いと考えています。
受講者の声
現在水素環境で使用されることの多い材料がどうして選ばれているのかを理解することができた。水素環境のデータや情報は少ないため理解を深めることができた。
自分は材料や疲労に関する知識はあまりないのですが、自動車事例や実態に合わせた実験データの説明を頂き、理解・馴染みやすかったです。
水素そのものについて理解が深まったと感じました。分かりやすい講義ありがとうございました。
金属で貯蔵する際に材料の原子構造が重要になることは大変勉強になりました。
勉強になりました。テキスト資料を参考に深堀したいと思います。